東京湾対岸の川崎市と木更津市の間に海底トンネル「アクアライン」が開通し,
福井,愛知,静岡などの遠距離からバスで大勢の方々がこられ,自家用車の方も合わせますと,
全く予想外に多くの観光客が見えるようになりました。
バス会社や運転手からの問い合わせの電話が多く,ご朱印や説明の要望もあり,大変忙しくなりました。
たぬき塚や童謡碑などに説明の札を立て,境内の案内図を作るなど,精一杯対応しております。
それらによって経済的に潤うことはありませんが,
お寺のあり方である布教伝道に,少しでも役立たないものかと思っております。
開通当事に旅行雑誌の記者が何人か来られ,
「『初日の出はアクアライン,初詣は證誠寺』という記事を書くつもりですが,このお寺のご利益はなんでしょうか』」
と尋ねられました。
そこで私は仏教の言葉である「ご利益」の本当の意味について,
一生懸命説明いたしました。
「ご利益とは仏さまのお心に遭わせていただき,
この人生を心の底から安心して喜んで生き抜かせていただける事であります。
お釈迦さまは仏教を私達に初めて説かれ,
その根本的な思想として諸行無常,一切皆苦などといわれ,
私達の人生は因果の道理により思い通りにはならず,
何時何がどう変わるかわからないと述べておられます。
従って自分にとって都合の良いことがありますようにとか,
都合の悪いことがありませんようにと仏さまに祈願することは,
因果の道理を捻じ曲げようとする事で,み教えに反することです』
と申しました。
その記者は話にならないという表情で帰って行かれました。
後ほどその記者の雑誌を買って読みましたところ,
「初日の出はアクアライン,初詣は證誠寺,ただし願い事は少しだけにしておきましょう」
と書いてありました。
あれほど願い事はするものではないと言いましたのに,がっかりいたしました。
宗教とは自分勝手な欲望をかなえてもらう手段としか考えない浅はかさ,
欲望を満たすことだけを幸せと考え,
そのために地位や財産を得る能力ばかりにこだわり競いあっているおろかさ,
表面的な快楽だけを追い求めてそのむなしさに気づかないうかつさ,
このような現代人の心の貧しさはひどくなる一方です。
何とかしてわが浄土真宗のみ教えを広める以外にないと存じます。
どうか皆さん,今後とも聞法に励まれ,
一人でも多くの方々にみ教えをお伝えいただき,
心がやさしく豊かな人間らしい人生を送れる世の中になっていきますよう,
仏さまのお手伝いをさせていただきましょう。
東京湾アクアライン開通