ある秋の晩、寝ていた住職がふと眼を醒ますと、

何やら表がざわざわ騒々しい。

気になって戸の節穴からそーっと庭の方を覗いてみると、

折しも月の美しい季節で、夜露がきらきら光っていたり、

萩やすすきが風にそよいでいるのが昼間のようにハッキリ見える。

ところが聞こえていた音はぴたりと鳴り止んでおり、

寝ぼけているのかと自分で思った住職は再び床につく。

しばらくうとうとしてまたふと眼を醒ますと、

また今度も先ほどと同じように何かざわざわしている。

気になってよく耳をすますと何かお囃しのようにも聞こえる。

しかも段々音が大きくなっていく。

「これはおかしい」と思ったご住職は再び、節穴から覗いてみると、

何とそこには大小100匹程の狸が行列を作って

「證誠院のぺんぺこぺん、俺らの友達ゃどんどこどん」

と唱いながら踊っている。

おなかをどんどこ叩いたり、

中には葉っぱや葭の茎で作った笛で調子をとっているものもいる。

住職は最初びっくりしたがそのうちその調子があまり面白いので、

自分でも足で床を踏み鳴らしたり手を叩いたりしはじめた。

そのうちついにその狸の中に引き込まれて一緒に踊り出してしまう。

狸は驚きもせず、むしろ前よりもっと激しく唱い踊り出し

本堂の周りを行列を作って廻り始めた。

住職も負けじと一緒になって時間が経つのも忘れて踊った。

狸と住職の競争になった。


そのうち夜が明けてきて狸達は森に戻っていった。

またその次の晩、次の次の晩も住職が夜待っていると

同じように狸達の唄と踊りが始まった。

すっかり仲間にいれてもらった住職も一緒になって唱いおどった。

ところが4日目の晩、住職は待っているのに

全く音がしなくなって、狸たちが現れない。

住職は長い事待っていたけれども結局その晩狸は現れなかった。

翌朝住職は本堂の周りを調べていると、

そこにはお囃子のリーダーとして

ぼんぼこお腹を叩いていた一番の大狸が

腹の皮が破けて死んでいた。

住職は哀れに思いその大狸を葬った、、、


たぬきばやしの伝説